うわさ再考:「海外のビジネス・スタイルは詰めがあまい」 

『うわさ再考』第ニ弾。このページで強調したいことは、以下の二点です。

・「海外のビジネス・スタイルは詰めがあまい」という言葉は、多くの日本人マネジメントの間で繰り返し口にされるが、この真偽を論じることは、実は、あまり意味がない。ビジネスの表象部分ではなく、考え方やスタイルが違うことの背景(マインド)を理解することがまず必要。そのうえで、「じゃあ、どうするの?」まで考えないと、ただの井戸端会議か比較文化論どまり。われわれはビジネスのレベルで考えないといけない。「海外のビジネス・スタイルは詰めがあまい」かどうかの真偽を議論することに終始しても、何も生まれない。

・何か問題が発生した後の対策で、机上の議論に時間をかけず、早く動き出すアクションをとる。軌道修正は後からすればいい。動き出して取り返しのつかないことに限定して慎重になればいい。全ての事に対して手間ひまをかけたとしても、お金になるとは限らないし、また、時間と手間ひまを労している間に、ビジネス・チャンスを逃してしまう。すぐさま行動に移すというマインドへの切り替え、パラダイム・シフト(視座の転換)が必要。さもなくば、企業マネジメントは立ち行かなくなる。

◼️繰り返される「タイム・アップ(時間切れ)」のホイッスル

「たしかに日本企業は慎重で、物事の決定に時間がかかるけど、海外のやり方は詰めがあまくて、危なっかしい」。これは、日本人マネジメントの多くが台湾で耳にしたり、あるいは、日本人マネジメント自らが口にする言葉です。日本人マネジメントの間では、いわゆる「台湾あるある」として語られる一番の話題。ただ、日本人マネジメントの多くが、日本本社から3-5年という期間での出向であり、会社の課題に対して抜本的に手がつけられることなく、赴任期間を終了してしまう。つまり、ほとんどの日本人マネジメントは、自ら口にした不満に向かい合うことなく、決着のつかないまま、時間だけが経過していきます。これに白黒、ケリをつけるマネジメントは、ごく少数派。これは、当地の幹部・社員にとってみれば、「日本人あるある」です。

◼️ 「今日アクションをとり、やった結果が50点の出来映え」をまず目指す。

「荒々しい、先の読めない環境の変化に順応すること」が当然のこととされている海外では、フリーハンドで(既存のものさし、制約を取っ払って)、「これ、いいんじゃない?!」と思ってから、実行に移るまでのリードタイムがとても短い。日本国内のドメスティックなビジネスの進め方と、海外のそれを比較した場合、両者の違いは、この一点に尽きます。

誤解をおそれずに言えば、「今日やった結果が50点の出来映え」になるかもしれないが、「2ヶ月後に着手して、80点の出来映え」を目指すよりは、前者を選ぶ。これが、台湾当地のやり方であり、日本的なビジネス・センスとの決定的な違いです。「勇み足で進めて本当に取り返しのつかないこと」は、実は限定的ですし、十把一からげになんでもかんでもブレーキをかけるのは、当地の幹部・社員には受け入れられません。2ヶ月後には、ビジネス・チャンスがもう姿を消しているかもしれません。今日やった結果が50点なら、手法を変えて、またトライすればいいだけのこと。今日やったからこそ新しい何かが見えてくるかもしれません。

◼️時は金なり

この「ラフで、スピーディーなスタイル」は、他方で、日本的な管理スタイルや一般的な日本人の仕事のすすめ方から見ると、往々にして、「詰めがあまく、行き当たりばったり」なものとして映ります。「何か具体的な物事を、ササッと手際よく次のステージに進める行動(アクション)、フットワークの軽さ」、この現象は、立場が異なれば解釈も異なります。

※ 海外現地法人では、業務規定が整備されていても実際の運用が簡略化されているケースも多々見受けられます。さらには、整合性がとれず説明責任があいまいなまま疑義のある事案が、「どういうわけか、いつのまにか完了(closed)扱いされていた」ということもあります。これはきちんと審議されなければなりませんが、これを理由として、全てにブレーキをかけることは、ビジネス・チャンスの逸失、マネジメントの失策となります。

理由は簡単。全ての事に対して手間ひまをかけたとしても、お金になるとは限らないし、また、時間と手間ひまを労している間に、ビジネス・チャンスを逃してしまうからです。当地の幹部・社員にとって、「ビジネス・チャンスを取り逃がすことは、会社組織にとっては、ゆゆしきことであり、マネジメントが手をこまねいていることは到底受け入れられないこと」です。

「どちらが頭がいいか」、「どちらがLogical thinkingで優れているか」ではなく、単にビジネス・マインド、『思考回路』の違い。そして、留意すべきは、日本のやり方が決して世界標準ではないということです。この行き違いを放置してしまうと、幹部・社員のモチベーションを損なうことにもつながります。

◼️ ×「ルールは遵守することに意義がある」

日本的管理では、往々にして、「継続的に守ることが困難と思われる緻密なルール」を作り上げてしまい、さらには、ルールを守ること自体が目的化されてしまっています。ルール遵守に手間ひまがかかり、いつの間にか、ルールが形骸化することもチラホラ。また、その緻密なルールも、当初想定していなかったことが発生した場合、管理者いわく、「問題はありません。ルールは守っていたので、ガバナンス上、問題がないので問題ありません。ビジネス・チャンスの逸失?それは致し方無い」。これは、笑うに笑えない話です。

そう、これは「あなた自身の価値観が試される瞬間」です。「ココがおかしいよね」と「・・・違い」に指を差したら、その指をそのまま戻して、そう感じるあなた自身に向けてみてください。

  

↓応援していただけるとうれしいです。

にほんブログ村 サラリーマン日記ブログ 戦うサラリーマンへ
にほんブログ村

2022年卒の就職サポートなら【キャリアスタート】
よかったらシェアしてね!
目次
閉じる